Carl Zeiss Jena
Tessar 50mmF2.8
Exakta mount
オールドレンズ界のギャップ萌え

人は恥ずかしすぎると逆ギレする。しかし逆ギレできるのは、居直れるだけの度胸と自信のある人だ。むしろ大半の人は、気恥ずかしさをじっとこらえることだろう。このゼブラテッサーは、そんないじらしさが宿るレンズだ。

テッサーというレンズは、3群4枚構成でシャープさに定評がある。鷹の目テッサーという俗称は、オールドレンズファンなら一度は耳にしたことがあるだろう。鷹の目のように鋭く被写体をとらえるという意味だ。


元祖テッサーは1902年にパウル・ルドルフが設計した。1920年代にはそれまで主流だったトリプレット(3枚玉)に取って代わり、テッサーがレンズの主役の座につく。ツァイスはむろん、他メーカーからもテッサー型のレンズが数多く登場した。では、さぞかしすばらしい描写なのかというと、実はそれほどでもない。テッサーはよくもわるくも「フツーによく写る」レンズだ。ズバ抜けた個性の持ち主というよりも、安定感のある描写が特徴といえる。

Tessar 50mmF2.8
シリアルナンバーによると、1960年代後半に製造された個体だ。開放F2.8と設計に無理がないぶん、薄型鏡胴に仕上がっている。写真のレンズはエキザクタマウントだが、M42マウントのものが入手しやすい。

一方、ゼブラ柄は数あるオールドレンズの中でもひときわ目立つデザインだ。1950~1960年代にかけて、ゼブラ柄のレンズはある種のトレンドになっていた。カールツァイスイエナ製レンズを例にレンズデザインの変遷を見てみると、1950年代まではシルバー鏡胴、1960年代に入ると革巻き(黒鏡胴の一部に合皮が巻いてある)タイプがあらわれ、その後ゼブラ柄が登場する。1970年代以降は現代的な黒鏡胴となり、同時にレンズのMC(マルチコーティング)化が進んだ。シルバー鏡胴→革巻き→ゼブラ→黒鏡胴と変遷してきたわけだが、なかでもゼブラ柄のインパクトが突出しているのは、誰の目にも明らかだろう。

こうしたことを踏まえると、ゼブラテッサーはある種のギャップ萌えといえそうだ。見た目はオールドレンズ随一の派手なデザイン、しかし描写はごくごく普通の描き方。クラスであまり目立たない女の子が、デートのためにがんばってオシャレしてみたような、そのいじらしさに気がつくと、ゼブラテッサーに愛着がわいてくるだろう。

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